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無から出た錆
???私たちは、ほんとうは人の話を聞きたいのではないだろうか。しかもかなり突っ込んだ話を。学校や職場では距離を取らなければ巧く生きていけないくせに。そんなことをこの23歳の女性歌手の歌から、嫌というほど実感させられてしまった。彼女が影響されたという井上陽水や吉田拓郎の70年代の作品たちに、自身が主役の私小説の趣きがあったように、彼女もポップソング1曲に凄まじい質・量のリアルな「話」を盛り込む。どんな取材や詳細なプロフィール資料より、熊木杏里ヒストリーを強力に伝える「長い話」、2年ごしの思いを告白しようとする様子を「新春白書」というイメージに着地させる個性。口が裂けても懐かしい音楽などという形容はしたくない。(石角友香)
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優しさ溢れる暖かさ |
キラーチューンはなんと言っても1曲目の『長い話』。
落ち着いた柔らかなメロディ。
冬の暖かな暖炉の前だろうか、それとも夏の夜 静かな波打ち際だろうか。
ゆったりと時が流れる中、口は出せなかったような思い出を 静かな声で流れるように紡いでいく
……ほろりと涙がこぼれそうな一曲である。
惜しむらくは『私を辿る物語』が、フルコーラスで収録されていないことか。
アルバムの最後を締めくくるには、短いほうが雰囲気がでていいのかもしれないが…ぜひこの名曲は、完全収録してほしかった。
全体的に落ち着いた歌が多い。
1stにあったひんやりとした水晶のような感じは少なくなった。冷たく碧かった世界に、暖かいランタンの光を燈したようである。
だが、その曲にまどろんでいる中に飛び込んでくる詩には、心の隙間を刺すような殺し文句がいくつも隠れている。
普段なら引いてしまうような台詞なのだが、そう感じさせないのが、彼女の歌唱力の術なのだろう。
彼女の声に耳を傾けていると、胸のつっかえがすぅ?っと溶けて楽になれ、カウンセリングを受けているような気さえしてくる。
心の癒しを求めている方、癒してあげたいと感じている方に、ぜひオススメの一枚だ。
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奥が深 |
あたたかいのに、透明感があって。
無機質なのに、胸に染み渡って、
涙に似てるのに、強さがある。
か弱さを感じさせるクセに、背中を押してくれる。
彼女の歌声は、本当に、奥が深い。
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みちあふれる「無」 |
『無から出た錆』というタイトルは、前作『殺風景』から約二年リリースのなかった期間を「無」、完成した作品を「錆」と自嘲して呼んでいるわけだが、とんでもない、内容の充実ぶりにおどろく。
冒頭の『長い話』は、17歳から22歳の自分をたんたんと振り返る。「あのころはよかった」という感慨にふけるでもなく、嫌な記憶を封印するでもなく、とにかく前へ進むためだ。
『景色』では、「なにかがしたいんだ」という、もどかしくも力強い叫びが胸にひびく。
『雨』では、ときに優しく包みこむ雨になり、ときに雨を防ぐ傘になり、「君」に寄りそい思いやる気持ちが静かに伝わる。
『風のひこうき』は、井上陽水の『紙飛行機』への目配せも感じられるが、陽水の、風にあおられあやうい紙飛行機とはことなり、周囲の人々の期待や夢を風として受けとめて、自分なりの軌道を描いてゆっくりと飛ぶ「風のひこうき」のイメージが美しい。
彼女は、フォークソング好きを宣言し、陽水や吉田拓郎、泉谷しげる、遠藤賢司への敬愛を表明して、はばからない。たしかに彼らの最良の部分を受け継いでいるとも言えるわけだが、それでいてなおかつ新鮮だ。
歌うとき、自分自身は「無」となって、歌詞の言葉自体、楽曲自体が語りだすようにしたいと彼女は言う。すばらしくみちあふれる「無」である。
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ネオフォーク? |
「ゆず」あたりの歌謡フォーク以来、街角のへったくそ小僧以外ほとんど盛り上がらなかったジャンルに革命。
詩のセンスが独特かつわかりやすい。
J-POPに興味無し、という人にこそ聴いてほしい極上の吉股良サウンド。
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魔力です! |
彼女の歌声はどこか切なくて弱さを感じさせます。でもその中にも凛とした清涼感があり、聞いていてとにかく気持ちがいい。どんどん彼女の世界に引き込まれてゆく様はまさに魔力です!。今回の作品はそんな彼女の持ち味をプロデューサー吉俣良がとことん引き出しており、コーラスもほとんどないという徹底ぶり。ドラマ金八先生で話題の「私をたどる物語」が収録されているのもファンにはたまりません(シングルカット決定!)。曲のタイトルや歌詞も言語表現学科卒の彼女らしくとてもお洒落で素敵。特に「風のひこうき」は感動の一曲です。



